ニャー。俺はクロ。黒猫だ。人間の言葉で言うと、3歳くらいかな。俺の家は、小さな町の外れにある古いアパート。そこの1階に、婆ちゃんと一緒に暮らしてる。
婆ちゃんは優しくて、毎日缶詰の魚をくれる。俺、結構幸せな猫だよ。でもさ、最近、変なことが起こってるんだ。信じられないかもしれないけど、俺の目で見た本当の話。聞いてくれ。
あれは3日前の夜。月がやけに丸くて、窓から差し込む光が床を白く照らしてた。婆ちゃんはもう寝てて、俺はいつものように部屋をうろついてた。猫って夜が好きだろ?静かで、自由で、なんか落ち着くんだ。でも、その夜は違った。
最初に気づいたのは、音。カツ…カツ…って、小さいけどハッキリした足音。婆ちゃんの部屋じゃない。玄関の方から聞こえてくる。俺、耳をピクって立てて、首傾げた。婆ちゃん以外誰もいないはずだろ?泥棒か?でも、鍵は閉まってるし、窓も全部しまってる。気になって、そっと玄関の方に近づいた。
暗い廊下の先に、玄関のドアが見える。月明かりで影が伸びてて、ちょっと不気味。そしたらさ、その影の中に何か動くものが映った。小さい影。俺くらいの大きさで、尻尾まである。…猫?でも、俺はここにいるぞ。鏡でもないのに、なんで影が動いてるんだ?
ニャって小さく鳴いてみたら、影がピタって止まった。で、次の瞬間、足音がまた聞こえてきた。カツ…カツ…。今度は近づいてくる。俺、毛が逆立って、背中丸めて威嚇した。でもさ、誰もいないんだよ。影はあるのに、姿が見えない。匂いもしない。俺の目は暗闇でも見えるはずなのに、何もいない。
怖くなって、婆ちゃんの部屋に逃げ込んだ。婆ちゃんのベッドの下に隠れて、ジッと息を潜めてた。そしたら、足音が部屋の前まで来て…止まった。ドアの隙間から、影が見えた。黒い猫の形。でも、目が光ってない。普通、猫の目は暗闇で光るだろ?あれは、光らなかった。
朝になって、婆ちゃんが起きた時、俺はまだベッドの下にいた。婆ちゃん、笑いながら「クロ、どうしたの?お化けでも見たの?」なんて言ってたけど、俺には笑えなかった。あれ、お化けだったのか?それとも、俺にしか見えない何か?
それから毎晩、同じ時間に足音が聞こえるようになった。婆ちゃんには聞こえないみたい。俺が玄関の方を見ると、影がチラッと動いて消える。昨日なんてさ、婆ちゃんが寝てる横で、俺の尻尾に冷たい何かが触れた気がした。振り返っても、何もない。でも、俺、感じてるんだ。あいつ、まだここにいるって。
俺、黒猫だからさ、昔から不吉だとか魔物だとか言われるけど…今は俺が何かヤバいものに狙われてる気がして仕方ないんだ。ニャー…誰か、助けてくれよ。
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