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あなたのうしろにいる恐怖の百万個太郎


ねえ……気づいてる?


いま、あなたのうしろに――いるのよ。


そう……ぴったりと。  

背中に、張りつくくらい近くに。


名前?  

ふふっ……教えてあげる。


“恐怖の百万個太郎”。


へんな名前でしょ?  

でも……その名前を聞いたら、終わりなの。


太郎はね、自分をひとつにとどめておけないの。  

だって、さみしがり屋だから。


鏡に映れば、ひとつ増える。  

水たまりをのぞけば、またひとつ。  

夢を見れば、またひとつ。


そうして……百、千、万――  

とうとう、百万個になっちゃったの。


ねえ、あなたのうしろには……いま、いくつの太郎がいると思う?


ひとつ? ふたつ?  

――そんな数じゃないよ。


百万個。  

ぜんぶ、あなたのうしろに、くっついてるの。


ねえ……うしろ、見たい?


だめよ。


見たら、入れ替わっちゃうの。  

太郎と、あなたが。


うしろを向いたその瞬間……  

太郎のひとつが、あなたの中に**入ってくる**の。


そして……あなたは消える。


誰も気づかない。  

でも、鏡の中のあなたが……ちょっと笑ってるの。


それが合図。


……今夜、あなたが夢を見るなら、覚えておいて。


夢の中で……数えてる声が聞こえたら……


「いーち、にーい、さーん、しーい……」


それ、太郎よ。  

数えながら、あなたのうしろに並んでるの。


……百万まで、数え終わったとき――  

あなたは、もう……戻ってこれない。


さあ、今、あなたは何を感じてる?  

寒気?  

耳の後ろのざわつき?


それが太郎よ。


もう……あなたのすぐうしろにいるんだから。


ふふっ……振り返ったら、**だめ**だよ。


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