登場人物
悠斗(夫、42歳、建築士)
真由(妻、40歳、専業主婦)
場面
深夜のダイニング。時計は0時を回り、静まり返った家にキッチンの蛍光灯だけが冷たく光る。テーブルの上には空のワインボトルと半分残ったグラス。悠斗は帰宅したばかりで、ネクタイを緩めている。真由はソファに座り、スマホを手にじっとしている。
真由(スマホから目を上げ、低い声で)
…また遅かったね。どこ行ってたの、悠斗。
悠斗(コートを脱ぎながら、疲れた口調で)
会社だよ。クライアントとの打ち合わせが長引いてさ。毎回同じこと聞くなよ。
真由(鋭く)
同じこと? だって、あなたの話、最近おかしいもん。昨日の夜だって、電話に出なかったよね。
悠斗(イラついたように)
電話? 会議中だったんだよ。真由、最近やたら疑り深いな。何か用?
真由(立ち上がり、声を抑えて)
疑り深い? ふうん。じゃあ、これ見てよ。(スマホをテーブルに滑らせる)このメール、誰から?
悠斗(スマホを手に取り、顔が強張る)
…なんだこれ。俺のメール、勝手に見たのか?
真由(冷たく笑って)
勝手にじゃないよ。あなたがパソコン開けっ放しにしてたから、目に入っただけ。「昔の約束、覚えてる?」だって。誰なの、この女?
悠斗(声を荒げて)
だからって、プライバシー侵害だろ! ただの昔の知り合いだよ。なんでこんな大騒ぎするんだ!
真由(一歩近づき、目を細めて)
昔の知り合い? 悠斗、私のことバカにしてる? あなた、結婚前に「過去に何も隠してない」って言ったよね。それ、嘘だった?
悠斗(グラスを手に取り、苛立って飲む)
嘘とかじゃない! ただ…昔、ちょっと関わった人がいただけだ。もう終わった話だろ。
真由(静かに、だが鋭く)
終わった話? じゃあ、なんでその人が今メール送ってくるの? ねえ、悠斗。私にも隠してる過去、あるよね。あなたが知らない、私の過去みたいに。
悠斗(グラスをテーブルに叩きつけ、目を上げる)
…なんだそれ。真由、お前、何か企んでるだろ? 急に過去とか言い出して。
真由(じっと見つめて)
企む? 違うよ。あなたが正直じゃないから、私も黙ってられないだけ。私だって、昔…あなたに言わない方がいいこと、したことあるの。
悠斗(顔を歪めて)
は? 何だよ、それ。言えよ、はっきり!
真由(一瞬目を逸らし、囁くように)
…言ったら、あなた、私を許せる? あなたがその女のこと話さない限り、私も黙ってる。
悠斗(しばらく沈黙し、吐き捨てるように)
…ふざけんな。こんな話、続ける意味ないだろ。(ジャケットを手に立ち上がる)俺、寝る。
真由(背中に向かって)
逃げるの? いつもそう。話したくないことあると、すぐ逃げるよね。
悠斗(振り返らず、ドアに向かいながら)
…お前もな。
(ドアが閉まり、静寂が戻る。真由はテーブルに残されたグラスを見つめ、ゆっくりと手に取る。)
解説
このストーリーでは、夫婦の口喧嘩を「過去の秘密」というダークなテーマで展開しました。互いに隠している何かがあるという不信感が、日常の小さなきっかけ(遅い帰宅、メール)から爆発し、明確な解決に至らないまま緊張が残る展開にしました。
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