「…あれ? こんな道、あったっけ?」
学校帰りの夕暮れ時、佳奈(かな)はふと足を止めた。
いつもの通学路のはずなのに、見覚えのない細い路地が目の前にある。アスファルトはひび割れ、薄暗い街灯がぼんやりと光を灯している。
興味本位で足を踏み入れると、背後で風が吹いた。
振り向くと、来たはずの道がない。
「えっ…?」
背筋が冷たくなった。
仕方なく、路地の奥へと歩を進める。
周囲の家々はどれも古びており、窓ガラスは曇り、カーテンの隙間から何かが覗いているような気配がする。
それなのに、誰の気配もしない。
やがて、ぽつんと立つ公衆電話が目に入った。
携帯の電波は圏外。
「おかしい…こんな場所、地図にもなかったのに…」
公衆電話の受話器が勝手に外れ、ぶらぶらと揺れた。
「…誰かいるの?」
佳奈はそっと受話器を耳に当てる。
『カエラナイノ?』
耳元で、幼い声が囁いた。
ゾクリとする。
振り向くと、さっきまでなかった「公園」がそこにあった。
ブランコがゆっくりと揺れている。
誰も乗っていないのに。
視線をそらせない。
ブランコの隣の鉄棒に、誰かがいる。
…女の子。
黒髪が顔にかかっていて表情は見えない。
白いワンピースが風に揺れる。
ふと、佳奈の足元で何かが動いた。
見下ろすと、影。
その子の影が、ぐにゃりと歪んで伸びていた。
「……!」
息が詰まる。
足が動かない。
女の子が、ゆっくりとこちらに向かってきた。
『…カエリタイ?』
顔が見える。
──佳奈と、まったく同じ顔だった。
その瞬間、意識が暗転した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目を開けると、いつもの道だった。
でも、何かが違う。
通り過ぎる人たちが、どこか妙に冷たい。
顔がぼんやりと滲んで見える。
まるで、
……自分だけが、ここにいないみたいに。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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