ある日、夕方の公園を散歩してたんだ。秋の終わり頃で少し肌寒い感じ。木々の葉っぱが色づいてて、なんとも言えない風情があったんだけど、なんとなく胸騒ぎがしてたんだ。すると、ベンチに座っているパーカーを着たおじさんが目に入った。彼は少しボロボロのパーカーを羽織って、遠くを見つめてた。その時は気にも留めずに通り過ぎたんだけど、なぜか視線を感じたんだ。振り返ると、そのおじさんがこっちをじっと見てたんだ。ちょっとした寒気を感じながらも、その公園を後にしたんだ。
次の日も同じ時間に同じ公園を通ったんだけど、またあのおじさんが同じベンチに座っていたの。まるでずっとそこにいるみたいな感じでね。なんか気味が悪いけど、無視して先に進もうと思ったら、おじさんから声をかけられた。「寒くないかい?」って。なんだか分からないけど、彼の声はどこか懐かしいような気がして、自然と足を止めたんだ。
話してみると、彼は昔、その場所で散歩するのが大好きだったって言うの。好きなパーカーを着て、木々の間を歩くのが楽しみだったんだって。でもなんだかんだで、いつも夕方になると肌寒さを感じて早めに帰ってたみたい。「いいパーカーだね」ってつい褒めると、彼はにっこり笑んで、「ありがとう、でもこのパーカーにはね…」と声を低めて続けた。
その瞬間、静かだった公園の風が急に強く吹いて、一瞬、おじさんのフードが被さったんだ。すると、風に乗ってきた声が耳元で響いた。「このパーカーはね、もう僕を温めてくれないんだ」。背筋が冷たくなって、目を見開くと…おじさんの姿が消えてたの。あの場所には古びたパーカーだけがベンチに残されていたんだ。追い風がそれを吹き飛ばしそうにしてたけど、なんだか動かずにしっかりとその場に留まってた。あれが彼の秘密だったのか、結局わからず仕舞いで、急いでその場を立ち去ったんだよ。もうその公園には行かなくなったんだけど、たまに夢であのおじさんが出てきて、不思議な話を聞かせてくれるんだ。彼の秘密を知る日は、いつか来るのかな。
その晩、妙な夢を見たんだ。公園のそのベンチに座っているパーカーおじさんが、何度も同じことを繰り返し言うんだ。「寒くないかい?」彼が何を意味しているのか、気になって仕方なかった。夢の中の公園は暗く、どこか現実の世界よりも不気味な感じがした。でもなぜか、ただそこに座っているだけの彼がとても悲しそうで放っておけなかったんだ。
ある日、勇気を振り絞って、おじさんのいたベンチに戻ったんだ。そこでまた夢の中と同じ問いかけをされたとき、私の中で気づきが生まれた。彼が本当に求めていたのは、誰かが彼を思い出してくれることだったんだ。あの古びたパーカーは彼の存在を証明する最後の手がかりだったのかもしれない。何かを忘れられてしまった悲しみに、そしてその存在を再び忘れ去られることへの恐怖に。公園の風が、しんみりと舞い上がる葉をもてあそび、何もかもを包みこむ
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