えっとね、俺にもついに彼女できたんだよ。大学入って最初のサークルの飲み会で出会った彼女、可愛くてちょっと控えめなタイプ。まさに俺のタイプさ。デートして、映画見たり、長電話したりして、マジで幸せだったんだけど、ちょっと変なことがあったのよ。
その日は彼女の部屋で一緒にDVD見ていて、けっこう夜遅くなっちゃったのね。彼女がさりげなく「泊まっていかない?」って言ってくれてさ、内心でガッツポーズだよ。んで、彼女のベッドで横になって、彼女はいつの間にかスースー寝息を立ててる。俺は、まあちょっと眠れずに、暗い天井見上げながらボーっとしてたんだ。
そんとき、部屋の隅っこで何かちょろちょろ動くのが見えたんだよ。ぼんやりとね、最初は目が慣れてないのかなと思ったけど、ジワジワと恐怖が沸いてきてさ。ココロ臓バクバクだよ。んで、勇気出して、スマホのライト点けたんだけど、なんにもいない。安心してライト消して、少ししたらまた動くのが見える。その繰り返しだよ、何回も。
とうとう我慢できなくて、「ねえ、目、覚めてる?部屋の隅っこ、何かおかしくない?」って小声で彼女に聞いたら、彼女はいきなり真顔で俺を見つめて「うん、それね。だいたい毎晩来るの。見慣れたらそんなに怖くないよ」と笑ったんだ。
その笑顔が真っ暗な部屋で灯る白い月みたいに冷たくて明るくて、俺はもう、その日の夜には何一つ眠れなかったんだよ。
次の日、彼女に何かあるといけないから、俺はサークルの先輩にその話をしたらさ、真っ青な顔して、「おい、お前の彼女ってどんな子だ?」とか聞かれて、話し終わると、先輩が真剣な顔して、「その子、3年前に亡くなったはずの……」って言いかけて、それ以上は何も教えてくれなかったんだ。
マジで怖くて、俺、あの部屋にはもう二度と足を踏み入れられなかったよ。どうやらその彼女の正体は、サークルの都市伝説に出てくる幽霊だったらしい。それから彼女からの連絡は一切途絶えちゃって、サークルのやつらも彼女のことを話題にするのをやめたんだ。
明るくて活気のある大学生活が一変して、オレは人の姿の見えない「彼女」と過ごしたあの夜を忘れられないでいる。今でも夜になると、部屋の隅っこで何かがチラチラ動くのが見えて、その度に彼女が言った「見慣れたらそんなに怖くないよ」という声が聞こえてくる気がするんだ。
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