ある晩のことだった。友達のケンタとオレは、街をふらついてた。そんなに遅い時間じゃなかったんだけど、なぜかその日は人通りが少なかったんだよね。そしてね、突然前からママチャリに乗ったおばさんが現れたんだ。
でもね、このおばさんがなんか変だったんだ。顔が真っ白で、目が真っ黒。服装も古くからの黒いワンピース。まるで、昔の写真から飛び出してきたみたいな感じで、ただただ真っ直ぐにこっちに向かってるの。
ケンタとオレは「何これ?」「冗談だろ?」って笑ってたんだけど、おばさんはずっと無言。ただ、ママチャリをこぎ続けてる。そして、おばさんがこちらを通り過ぎた瞬間、背筋がゾクッとしたんだ。
何が怖かったって、おばさんが通り過ぎた後に振り返ると、おばさんもオレたちを見てたんだよ。でも、さっきまでの真っ直ぐな道からは逸れて、今は全く異なる方向に行ってる。まるで、通り過ぎるときだけ時間が歪んだみたいに。
その夜から、オレたちはその道を避けるようになったんだけど、後日聞いた話によると、その周辺でよく見かけるおばさんがいると言うんだ。でも、近づいて話しかける人は誰もいない。話そうとすると、いつの間にか消えてしまうらしい。
怖いんだけど、それだけじゃなかった。そのおばさんを見た人たちが、夜な夜なおばさんの笑い声を耳元で聞くという噂が広まってた。そしてなんと、オレもある夜、息が詰まるような悪寒と共に、耳元でくすくす笑う声を聞いたんだ。
それは、まるでママチャリに乗るおばさんがオレたちにかけた呪いのようだったんだ……。
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