昔ね、近所にちょっと風変わりな家族がいたんだ。母親がものすごく厳しくて、息子の勉強に対する執着が半端なかったんだよ。その子、たしかシュンって名前だったかな。まぁ、いつも部屋にこもって勉強ばっかしてたっけ。友達もほとんどいなくって、みんなちょっとその家を怖がってたんだ。
ある夜、近所で大きな物音がしたんだ。ドカンって。翌朝、警察があの家に行ってるのを見たよ。母親は無理やり息子に勉強させて、あまりのプレッシャーに耐えかねたシュンくんが窓から飛び降りたらしいんだ。
その後、その家は空き家になっちゃってね。でもね、夜になると窓から勉強机の前に座る少年の姿が見えるって噂が広まったんだよ。まるで学べなかった未来を求めているみたいにね。それからさらに月日が流れたある日、その家を更地にすることになったんだけど、解体作業員の一人が言ったんだ。「あそこの部屋に入ったら、誰かが僕の手を取って試験問題を解こうとする力を感じた」と。
本物か幽霊か、確かめる勇気はないけど、夜中にあの近くを通るときは、なるべく早足で過ぎるようにしてるんだ。数年後、新しい家族がその土地に家を建てて住み始めたんだ。でもね、ちょっとした奇妙なことが起こりだしてね。その家の子供たちが夜中に誰かに勉強を教えられてると訴えるようになったんだよ。声は聞こえないけど、手が勝手に動いて算数の問題を解いたり、歴史の年表を書いたりしてるっていうの。
親はそんなの子供の空想だって笑ってたけど、ある晩、母親が廊下で倒れているのを見つけたんだ。目を覚ました彼女は「シュン君が戻ってきて、勉強を教えてくれるって言うから同意したわ。でも、息ができなくなって...」なんて話してて、家族は次の日にはすぐに引っ越しを決めたんだ。
それ以来、その地には誰も住まわない。ときどき新しい引っ越しの話が出るけど、結局みんなあの噂を聞いては断念してる。今でも時々、あの部屋の窓には勉強する少年の影がチラリと見えるそうだ。しかもね、近所の子供達が不自然に成績がアップすることがあるんだ。親は喜ぶけど、子供達は口をそろえて「夢の中でシュン君が教えてくれるんだ」と言うんだって。
風変わりだったあの家とシュン君の影は、もうこの街の一部になっちゃってるみたいだよ。怖いよね、勉強が幽霊になるなんて。だからさ、勉強するときは、時々は息抜きもしないとね。
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