昼下がりのモスバーガー。俺は照り焼きチキンバーガーを頬張りながら、至福のひとときを楽しんでいた。外の喧騒から切り離されたこの空間は、俺にとってのオアシスだ。ふと隣の席に目をやると、そこにはどこかで見たことのある顔が——。
「……坂口憲二!?」
思わず声が出た。サングラスをかけた男が、チリドッグを片手にコーラを飲んでいる。いや、間違いない。坂口憲二だ。テレビで見たままの精悍な顔立ち、ワイルドなヒゲ。まさか、こんな庶民的な場所で遭遇するとは。
俺はそっとスマホを取り出し、SNSに書き込もうとした。
『今、モスバーガーで坂口憲二を目撃』
——だが、その瞬間、彼と目が合った。
「ちょっと待って、今なんか書こうとしたでしょ?」
ギクリとする俺。さすが元格闘家、鋭い察知能力。
「いや、別に……」
「今の時代、SNSですぐ拡散されるからね。俺も静かにモスを楽しみたいんだよ」
「す、すみません……」
バレたらまずい、という目をしている。まさか秘密のモスバーガータイムなのか? 俺は仕方なくスマホをしまい、照り焼きチキンバーガーに集中することにした。
——が、その時、店内にアナウンスが流れた。
「店内のお客様にお知らせいたします。本日、濃厚接触者の可能性があるお客様がご来店されております」
店内がザワつく。何!? 濃厚接触者!?
ざっと周りを見回すが、特に怪しい人影はない。しかし、ここで問題がある。俺の隣には坂口憲二。つまり、俺が濃厚接触者なら、坂口憲二も……?
「……おい」
「……いやいやいや、まさかね?」
お互いの顔を見合わせる。どうする、この状況。しかも、スタッフがこちらを見ている。ヤバい、何か誤解されている気がする。
「……ちょっと外に出るか」
「そうだな」
俺たちはそっと立ち上がり、自然な動きを装って出口へ向かった。しかし、店の外には保健所の職員が待ち構えていた。
「ちょっとお話よろしいでしょうか?」
詰んだ。
「……おい、俺、モスバーガー食べてただけなんだけど」
「俺もだよ! ただ照り焼きチキンバーガー食べてただけ!」
まさか、昼下がりのモスバーガーがこんな騒動になるとは思わなかった。
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