夜の山道を車で走っていた俺は、突如として目の前に広がる強烈な光に目を奪われた。ヘッドライトを上回る眩しさ。まるで昼間の太陽が突如として降りてきたかのような錯覚を覚えた。
「なんだ、これ……?」
ブレーキを踏むと同時に、エンジンが急に停止した。ラジオも途絶え、車内が不気味な静寂に包まれる。外を見ると、林の向こうから巨大な銀色の物体がゆっくりと浮かび上がっていた。円盤型で、表面はまるで水銀のように滑らかに光を反射している。
恐怖よりも好奇心が勝り、俺はドアを開けて車の外に出た。肌にまとわりつくような空気の圧力。何かが近づいてくる気配がした。
突然、頭の中に直接声が響いた。
「地球の生命体よ、交流を求む」
振り向くと、そこには背丈が俺の胸ほどしかない、細長い手足を持つ存在が立っていた。肌は灰色、目は漆黒のアーモンド型。映画で見る典型的な宇宙人、そのものだった。
「お、お前……誰だ?」
「我々は旅人。貴様と話がしたい」
声は感情がなく、しかし確実に俺の脳内に響いている。不思議と恐怖はなく、むしろ奇妙な安心感があった。
「……何を話したいんだ?」
「地球の未来について」
その瞬間、視界が白く染まり、次の瞬間、俺は全く別の場所にいた。見渡す限りの星々、果てしなく広がる宇宙空間。地球が遠くに青く光っている。
「……夢、なのか?」
「いや、現実だ。お前に見せてやろう。地球の運命を」
目の前に映像が浮かび上がった。そこには荒廃した地球が広がっていた。大地はひび割れ、空は黒い雲に覆われ、無数の建造物が崩れ去っている。生き物の気配はない。
「……これは?」
「このままではお前たちの星は滅ぶ。環境破壊、戦争、貪欲な欲望の果てに??」
胸が締め付けられるような感覚がした。しかし、俺にはどうすることもできない。
「どうすれば……?」
「選択はお前たちに委ねられている。我々は見守るだけだ」
次の瞬間、俺は再び車のそばに立っていた。宇宙人も、円盤も、何もない。まるで何事もなかったかのように静かな夜が広がっている。
だが、俺の手には小さな金属片が握られていた。それが何を意味するのか、俺にはまだ分からない。
ただひとつ確かなのは--
あの出来事は夢でも幻でもなかった、ということだ。
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