その夜は、町中が静まり返ってて、なんか空気が重かったんだよ。普段なら深夜でもおじさんとかコンビニ帰りの学生が歩いてんのに、その日は誰もいなくて、むしろ街灯の光が妙にぼやけて見えるくらいだった。
俺は仕事の帰り道で、とっとと家に帰ろうと思いながら早足で歩いてたんだけど、ふと後ろからヒールの音がカツ、カツって響いてきてね。「こんな人気のないところで?珍しいな」って思いながら振り返ったら、そこにめちゃくちゃ綺麗な女の人が立ってたんだよ。
その女性、白いワンピースに長い黒髪で、まるで雑誌から飛び出してきたみたいな美人だった。普通ならちょっと緊張して話しかけられない感じだけど、どこか引き寄せられる不思議な雰囲気があった。彼女が「すみません、この辺りに詳しいですか?」って甘い声で聞いてきたもんだから、「まぁまぁ、この辺には住んでるんですけど」って答えたんだ。そしたら彼女、「この先に古い旅館があったと思うんですけど、道合ってますか?」って言うわけ。俺、この町にはずっと住んでるけど、そんな旅館聞いたこともねぇんだよ。でも彼女の目が妙に真剣そうだったから、「いや、もしかして知らないだけかも」って答えて、一緒にその方向まで歩くことにしたんだ。
歩きながら少し話してみたんだけど、彼女、全然この辺に住んでる人じゃなさそうで、なんていうか、少し浮世離れしてる感じだった。名前聞いても「忘れちゃいました」とか言うし、携帯持ってないとか平然と言うし、正直ちょっと変だなと思い始めた。でも何も言えなくて、一応目的地らしき場所まで一緒に行ったんだ。
その場所に着いたとき、周りはもう真っ暗で、見慣れた街並みのはずなのにちょっと違って見えた。それに妙に静かで、風も音も何もない感じ。彼女が「ここです」って指差した先を見たら、ぼろぼろの建物が一軒立ってた。どう見ても人が住んでるような場所じゃないんだよ。それで急に身の危険を感じて、「じゃ、ここで失礼します」って振り返ろうとしたら、「行かないで」って、彼女が俺の手を掴んだんだ。その手、驚くぐらい冷たくて、一気に心臓が縮む思いがした。
瞬間、彼女の顔がぐにゃりと崩れるように変わっていって、目が異様に大きく開いて、笑うでもない、泣くでもない、なんとも言えない表情で俺を見つめてきたんだ。その顔はもう人間のそれじゃなくて、まるで描きかけの絵が歪んだみたいでさ。恐怖で全身が動かなくなちゃったんだよ。俺はもうパニックで、声も出せずにその場に立ち尽くしてた。でもその瞬間、彼女が低い声で「逃げても無駄だよ」って囁くように言うんだ。そこでようやく我に返って、全力で振り払って走り出した。後ろから「待って…まだ話は終わってないよ…」ってヒールの音が追いかけてくるのが聞こえてさ、心臓が壊れるかと思ったよ。
必死になって逃げて、どうにか明るい通りまで戻ったんだけど、振り返ってももう彼女の姿はなかった。でもなんかおかしいと思って、ふと手を見たら、あの時掴まれたところが真っ黒に変色しててさ、じわじわと肌の奥から冷たさが広がっていくのがわかるんだよ。今こうやって話してるけど、たまに思い出すんだよね。あの時の冷たさが、まだ手に残ってるような気がするってさ…
ホラー漫画は、恐怖や不安をテーマにした漫画の一ジャンルです。通常、超自然的な存在、心理的な恐怖、または人間の暗い側面を描写し、読者に緊張感や驚きを与えます。
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