うちの学校にはね、どうしても誰も使いたがらない教室があったんだ。それが、旧校舎の3階、一番奥の教室。
まぁ、古い校舎だし、ちょっと暗くてボロいから嫌な雰囲気があるのはわかる。でも、それだけじゃないんだよ。そこには昔から「白い女の霊」が出るって噂があったんだ。
最初にその噂を耳にしたのは、一年生のころだったかな。先輩たちが怖がらせるために「3階の一番奥には近づくなよ。白い女が出るからな」なんて言ってきてさ、最初はみんな冗談だって笑ってたんだよ。それに、本当にそこを使ってるクラスなんてなかったから、気にもしなかった。でも、二年生になってうちのクラスがその教室になったとき、みんなの態度が変わった。
最初の日、教室に入った瞬間、なんか空気が違うなって思ったんだ。窓は全然開いてないのに、なんか妙に寒いし、湿っぽい感じがする。それに、誰かがずっと見てるような視線を感じるんだよ。みんな何も言わなかったけど、明らかに居心地悪そうにしてた。
数日経ってから、女子の中で噂が広がり始めた。「黒板の隣の窓に、授業中なのに知らない女の人が映る」とか、「天井を見たら誰かが逆さまにぶら下がってた」とか。でも男子はそんなの信じなくて、「お前ら怖がらせようとしてるだけだろ」って茶化してた。だけど、その態度も長くは続かなかったよ。
ある日、放課後まで残ってた男子グループが肝試ししようって言い出して、真っ暗な教室に一人ずつ入って順番待ちしてたんだ。一番最初に入ったやつが、真顔で教室から出てきて、「何か、後ろに立ってた」って言うんだよ。でも、誰もそんなの信じなくて、次のやつが入った。そしたら今度は、教室から大声で叫びながら飛び出してきた。「窓の外に、顔があった!見たんだよ!」って。その顔は異常に青白くて、目がないような感じだったって。
それからは、誰も教室に近づこうとしなかった。先生たちはその話を聞いても取り合わないし、「気のせい」とか「ただの思い込み」とか言うだけ。でもクラスのみんなは本気で怯えてたし、授業中も誰も後ろを振り返らなかった。それどころか、窓を閉め切ってカーテンも閉めるようになったんだ。
そんなある日のこと。一番怖がるタイプの女の子が、授業中に突然泣き出したんだよ。理由を聞いてみると、「さっき、教室の後ろの隅で、知らない女の人がこっちを見てた」って。それも、ニタァーって不気味に笑ってたって言うんだよ。その瞬間、教室中が凍りついた。誰も振り返らない。窓の外も、教室の後ろも、誰も確認しようとしなかった。でも、その女の子の涙が止まらないものだから、仕方なく担任の先生が教室の後ろを確認しに行ったんだ。
正直、先生はそんな話信じてなかったみたいで、「大げさに騒ぐな」って顔してた。でも、先生が教室の後ろに歩いていった瞬間、教室の電気がピカッと消えたんだよ。真っ暗闇の中で、急に誰かが教室の奥からすすり泣く声を聞いた。女の子…いや、大人の女の人みたいな低い声だった。誰も動けなくて、何が起きてるのか理解もできなかった。
数秒後、電気がついたとき、先生が倒れてたんだ。教室の後ろの真ん中で、顔が真っ青で動かない。周りに駆け寄ったけど、何とも言えない異様な冷たさが先生の体中から感じられた。
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