なあ、ちょっと聞いてくれへん?最近の話やねんけど、めっちゃ胸騒ぎして、誰かに言わんと気持ち悪うて寝られへんねん。…そうやねん、うちの彼氏の話。彼の名前は裕也(ゆうや)言うて、付き合って半年くらいやな。優しくて穏やかで、ちょっと不器用なんがまたええ感じやってん。ほんま、好きやったんやで。今でも、これがウソやったらどんだけええかって思うわ。
ことの始まりはな、裕也が「今日は仕事忙しいから会えへん」言うた日のことやねん。なんか様子おかしなかったし、気になってしゃあなかったから、仕事終わりにちょっとだけ様子見に行こか思てん。…ほんま、これがアカンかったんやろな。
その日、裕也は駅前のカフェにおってん。夜の9時も過ぎてたけど、仕事帰りのスーツがなんかちょっと乱れててな。「あれ?」って思ったんやけど、裕也、一人やなかったんよ。向かいに座っとったんは、黒髪ストレートの細っこい女の子。なんか、うちよりちょい若そうやなぁって感じの子や。
心臓がバクバク言うて、どうしたらええか分からんかったけど、その場離れることもできんくて、遠くからじっと見とったんよ。その子がニコッて笑うたびに裕也も笑ってさ…その仕草が、うちとおるときとまったく一緒やねん。
次の日、うち、思い切って裕也に聞いたんよ。「昨日、誰とおったん?」って。そしたら、裕也めっちゃ驚いた顔してたけど、ちょっとしてから「同僚やで。なんもないわ」言うて笑って誤魔化したんよ。せやけど、その笑顔がな、なんか冷たかってん。…そっからや。なんか、全部おかしなっていったんは。
裕也の部屋で過ごす夜、妙な気配感じるようになってん。なんか、誰かにじーっと見られてるみたいな感じや。特に寝とるときやな、背中のほうからずーっと視線感じんねん。裕也に言うても「疲れてんねんちゃう?」って軽く流されるだけ。
でもな、ある晩、確信したわ。夜中に目ぇ覚めたんよ。そしたら、ベッドの足元に女の子が立ってたんや。カフェで裕也と喋っとった、あの女の子や。目ぇ合うた瞬間な、彼女ニタァって笑って、こう言うてきたんよ。
「なあ、うちの裕也に触らんといてくれる?」
その声が耳から離れんまま、うちは悲鳴あげた。でも裕也、全然起きひんねん。なんも聞こえてへんみたいに、ぐーすか寝とるだけ。怖なって飛び起きて、部屋飛び出して、その夜は家帰ったわ。
それから数日、うち、裕也と距離置いてた。でも、怖いもん見たさっちゅうん?なんか気になって、カフェで見たあの女の子のこと調べてみたんよ。ネットで、地元の掲示板とかSNSとか探して…そしたら見つけたわ。彼女の名前は「美咲」。裕也の元カノで、去年、急に自殺したらしいねん。
…分かる?あの日、カフェで見たんは、もうこの世におらん人やってん。うち、あの時点で変なもん見てもーてたんやと思う。そしてな、裕也もたぶん気づいとる。せやから、うちが「彼女」のことに触れるたびに、あんな冷たい顔しとったんやろな。
この話してる間も、あの視線感じるねん。背中越しにじーっと、うちを見とる気がする。彼女、うちに何か言いたいんかな。でも振り向く勇気がないんよ。もし振り向いたら…そこに彼女が立っとる気ぃするから。
…あ、またや。聞こえる。「触らんといて言うたよな?」って。…どうしよ、うち、もう逃げられへんのかな…。
ホラー映画は、観客の恐怖心を探求し、さまざまな形で人間の暗い側面を描き出します。
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