ある夜のことなんだけど、すんっごい嫌な夢を見て目が覚めたんだ。部屋の中は真っ暗で、時計見たらだいたい夜中の2時半くらいだったかな。なんか胸がざわざわして、どうにも落ち着かなくて。なんだろうなーって思いながら、水飲もうと思って台所に行ったんだよ。そしたらリビングの方から、何か音がするの。「カサカサ」とか「ゴトン」とか、なんか変な音。うち夜中にテレビとかつけっぱなしにしないし、家族ももう全員寝てる時間だから、「え、何?」ってめちゃくちゃ警戒しちゃってさ。
とりあえず息を殺して、カーペットがきしむ音とかに気をつけながら、そーっとリビングのドア開けたんだ。するとさ……お母さんがいたんだよ。テーブルの上に置いといた残り物のポテトチップスの袋を、なんかムシャムシャ食べててさ。普通さ、あんな夜中に起きだして口に物入れてる大人とか見たら「大丈夫?」とか思うじゃん?でもね、なんか様子が違うんだよね。
背中がめちゃくちゃ丸まってるし、肩がピキピキって不自然に動いてるし、何より、顔を横から見た瞬間にぞっとした。口元が……なんか血で汚れてるように見えたんだ。しかも普通食べるときって咀嚼音とかするじゃん?それが異常にでかい「ぐちゃっ、ぐちゃっ」みたいな音でさ。本能的に「これヤバい!」って思ったね。
でも「お母さん?」って呼んじゃったんだよ。その瞬間、ピタッと腕を止めて、ゆっくり顔をこっちに向けたの。目は大きく見開いてて、どことなく白っぽい、まるで焦点あってない感じ。さらにやばいのが、表情が全くない。完全に感情が消えてるんだよ。でも次の瞬間、ニタァーって不気味に笑い始めて、突然すごい勢いでこっちに向かって這い出してきたの。四つん這いだよ!まるで動物みたいに床をバンバン叩く音が響いてさ、もう悲鳴あげる余裕もないくらい足早で迫ってくるの。
気づいたら、俺は全力で自分の部屋に駆け戻ってて、扉を閉めて鍵をかけた。でも外から「ドンドンドン!」ってすごい音で扉を叩いてきてて、さらに高い声で笑うのが聞こえるんだよ。ゾンビとかありえねぇだろって思ってたけど、マジで見た目とか動きが完全にそれなんだよ。それからどうやって朝まで耐えたのかよく覚えてない。でも朝になったら静かになってて、おそるおそるリビングに行ったら、お母さんが普通にソファで新聞読んでるの。まるで何事もなかったみたいに「おはよう」なんて笑顔で挨拶してくるんだよ。
俺、信じられなくて固まっちゃってさ。あの夜のことが一瞬で頭をよぎったけど、どうしても言えなかったんだ。でもなんとなくお母さんの顔をじーっと見てたら、ふと、口元に違和感を覚えたんだよ。微妙に赤っぽい汚れが唇の端に残っててさ、それをさりげなく袖で拭ってるのが見えたんだ。
俺は何も言わずにキッチンに向かったんだけど、ゴミ箱が目に入った瞬間、全身が凍りついた。中にポテトチップスの袋があると思ってたのに、それどころか破れた袋と一緒に、何か小動物みたいな毛の塊とか骨みたいなものが混ざってるのを見たんだ。俺はそっと蓋を閉めたけど、背後から「どうしたの?」って聞こえて、お母さんが笑顔で立ってるもんだから、もう何も言えなかった。それ以来、夜中には絶対起きない
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