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近所に住む黒いワンボックスカーに乗る男


俺が住んでるところの近所には、いつも同じ場所に止まってる黒いワンボックスカーがあるんだよ。昼でも夜でも、雨だろうが晴れだろうが、そこにじっとしてる。最初はただ単に素通りしてたんだけど、ある晩、帰り道でその車と目が合っちゃったんだ。いや、目が合うとか変な言い方だけど、運転席に座っている男がこっちをじっと見てたの。髪の毛は乱れてて、薄暗い街灯の下でその男の目だけが異様に光ってたんだ。


気味が悪いって思ったけど、正直車なんかが怖いわけじゃなくて、カメラか何かで監視していて犯罪に巻き込まれるんじゃないかとか、その辺を心配して帰ったんだよ。その夜は大したことなく眠れたんだけど、翌日もその車は同じところにあった。もちろん男もね。俺は怖くてその道を通るたびに少し早足になったよ。


数日後、仕事から夜遅く帰ってくる途中で、またその車が見えた。だけど今回は何か違った。運転席の窓が半分開いていて、いつもは閉まってた窓から、こっちに手招きしてるんだ。もちろん話しかけるなんてしたくないから、そのまま通り過ぎようとしたんだけど、気にはなった。意を決して少しだけ近寄って、「何ですか?」って声を掛けたんだ。


そしたらその男はやっと声を出して、「乗れよ」と言った。一瞬、やっぱりやばい奴かと思って足がすくんだけど、何故か体が言うことを聞かない。気づいたら俺は車のドアノブを握っていたんだ。その時、背筋に冷たさが走った。そのドアを開けても絶対にいいことなんてないって、体が警告してるんだ。振り返るその瞬間、男の顔がさらに怖ろしいくらいの薄笑いになって、「もう逃げられないよ」って言った。


背筋が凍りついたまま、俺はなんとかその場を離れたんだけど、振り返ったらそのワンボックスカーなんてどこにもなかったんだ。まるで最初から存在しなかったみたいに。次の日、あの車を見たっていう友達に話をしても誰も信じてくれない。だけど今でも、夜遅くなるとあの車のことを思い出すんだ。どこかでまた出会ってしまうんじゃないかってさ。


それ以来、俺はなるべく早く帰るようにして、その道も避けるようにしたんだけど、ある晩強い雨が降って、どうしても避けられない日があったんだ。その道を通って急いで帰ろうとしたら、やっぱりあの黒いワンボックスカーがそこにいたんだよ。今度はエンジンがかかってて、ライトがついてる。


その時、心の中で「行っちゃダメだ」って無性に警報が鳴り響いてた。でも足が動かないし、目がその車から離せなかった。その瞬間、車がゆっくり動き出して、俺の方に向かってきた。逃げようと思ったんだけど、雨でぬれた地面に滑って転んでしまったんだ。

次に気がついた時には、俺は自分の部屋のベッドの上で目を覚ました。全てがまるで悪い夢みたいだったけど、確かに膝には痛みが残ってた。あの夜、何が起こったのか今でもわからないけど、心からあの車とは二度と出会いたくないと思っている。



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