暗い宇宙を見下ろし、ウルトラの母は一人、静かに佇んでいた。広がる銀河の向こう側から、かすかに感じる不気味な波動。その正体は、果てしなく迫ってくる怪獣軍団だった。無限に近い数の怪獣たちが、遠くからじわじわと進み出てきた。彼女は心を引き締め、ひとりごとのように呟いた。
「また戦い…か。私は、いったいどこまで…」
けれど、心の奥にはほんの小さな、叶わぬ願いが残っていた。それは、この闘いの中で静かに一人の存在として誰かに寄り添い、守られたいという、秘めた小さな欲望。
その時、背後から低く響く声が聞こえた。「母さん、大丈夫か?」
振り向くと、ウルトラマンがそこに立っていた。彼は母の強さを知っているが、彼女の肩にかかる重責もまた、痛いほど理解していた。
「ありがとうね…でもこれは、私が担うべき戦い。あなたが心配してくれることが、何よりの励ましよ」
彼は母の言葉に少し目を細め、「それでも、少しでも力になりたいと思うのが息子の気持ちだよ」と、温かい微笑みを見せた。
母は彼に背を向け、怪獣軍団が待つ銀河の先を見据えた。「わかっているわ。いつも支えてくれていることも、私がここにいる意味も」
彼女の声はしっかりしていたが、その目には深い孤独が映っていた。戦士としての強さと、母としての愛情が交錯するその瞳には、限りない深い哀愁が漂っている。
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そして、怪獣軍団との戦いが始まった。目の前に現れた無数の怪獣たちは、果てしなく、まるで闇が押し寄せてくるかのようだった。銀河の果てまで続く彼らの姿に、ウルトラの母の胸が再びぎゅっと締めつけられる。
「ここで退けば、宇宙が破滅する…私が倒れるわけにはいかない」
彼女は両手を広げ、静かに呼吸を整え、エネルギーを一気に放出した。眩い光が怪獣たちに降り注ぎ、次々に倒していく。しかし、倒しても倒しても、また次から次へと怪獣たちが湧き出してくる。
「無限…まるで、私の試練を見透かしているようね」
彼女の体は少しずつ疲弊していったが、意地と誇りが彼女を支えていた。しかし、ふと心の奥から小さな声が響いた。「誰か…私を守ってくれる人はいないの?」
戦いの中、そんな自分が呟くことが信じられないと同時に、その言葉は驚くほど心にしみわたっていた。ウルトラの母は、息を整え、わずかに瞳を閉じた。「…少しだけでも、誰かに寄りかかれたらどんなに楽かしら」
その瞬間、遠くから力強い光が飛び込んできた。振り向くと、ウルトラマンや他の仲間たちが彼女の方へと駆けつけていた。彼は、母を見つめると、静かに頷いた。
「母さん、これ以上一人で背負うことはない。僕たちもいるよ」
彼女はその言葉に一瞬驚いたが、胸がじんわりと温かくなるのを感じた。
「ありがとう…あなたたちがいてくれるから、私は今ここにいられる」
戦士としての誇りに満ちた母の顔から、わずかな安堵の色が浮かんだ。彼女は皆と力を合わせ、無限の怪獣軍団に再び立ち向かっていく。彼女一人ではない、その思いが彼女をさらに強くしてくれたのだ。
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長い戦いの末、怪獣軍団はついに銀河の果てまで退けられた。周囲に静けさが戻り、星々が安らぎを取り戻した宇宙を見渡しながら、ウルトラの母は深い息をついた。肩には、戦いで受けた傷がずっしりと残っていたが、その表情には安堵と喜びが溢れていた。
「ありがとう、本当に…あなたたちがいてくれたから」
彼女は心からそう呟き、息子や仲間たちに微笑みを向けた。その目には、戦いの疲れと共に、母としての深い愛情が映っていた。
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