「はぁ、またやっちゃったよ……」 タイムマシーンの操縦席に座りながら、私は自分の頬をぺちんと叩いた。今度こそ、もっとクールに、堂々と現れるつもりだったのに。着地した瞬間、機体が派手に揺れて、膝から崩れ落ちるとか、ヒーローの登場としては最悪だ。これじゃまるでドジっ子キャラじゃん。 私はシートに背中を預け、ため息をつく。ここは20XX年の地球。私たちの未来から見たら「過去」だけど、ここにいる人たちにとっては「今」。それがまた、変な気分なんだよね。だって私、普段は星間連盟の訓練生。宇宙の平和を守るために厳しい訓練を受けてきた。だけど今回の任務は特別。未来から過去に戻って、地球の歴史を守るために戦う。私、サユリは自衛少女隊の一員であり、まあ、今日のヒーローってわけ。 外に出ると、夕焼けが街を包んでいた。ビルの影が長く伸びて、風がぬるい。この時代の空気って、なんだか懐かしい匂いがする。まだ宇宙船の排気ガスも、オゾン層の修復装置もないけど、人間の「生きてる」感じがする。……いやいや、しんみりしてる場合じゃない。 「よし、行くか!」 私は腰のホルスターから光子ブレードを引き抜いた。手にしっくりと馴染むその重みが、妙に安心感をくれる。 ターゲットはこの街に潜む「アンブラス」。未来で猛威を振るうモンスターだけど、今の時代に現れるのは初期形態の幼体。今のうちに始末すれば、未来が救われるってわけ。訓練で何度もやってきた。だから大丈夫、怖くない……怖くないってば! 「なんか出てきてよ!」 独り言が多くなるのは緊張してる証拠。だけど、静まり返った街路を歩く私の声は妙に響いて、ちょっと心細い。足音一つ立てないように歩いていると、突然―― 「ぎゃあっ!」 物陰から黒い影が飛び出してきた。全身を覆う漆黒の毛と、ギラつく赤い目。間違いない、あれがアンブラスだ。 「やっべ、本当にいた!」 手にしたブレードを構え、瞬時に戦闘態勢に入る。身体が自然に動くのが、自分でも驚きだ。最初の一撃を避け、相手の懐に飛び込む。そして―― 「くらえっ!」 光子ブレードがアンブラスの胴体を裂くと、眩しい光が弾けるように飛び散った。やった!……と思ったのも束の間、背後から低い唸り声が聞こえた。振り返ると、もっと大きなアンブラスが2体。 「マジかよ……おかわりとか聞い